日露戦争の頃、横須賀鎮守府が手軽で肉と野菜の両方がとれるバランスのよい食事としてカレーライスを採用。さらにカレーだけでは不足するカルシウムと葉酸を補うために、牛乳とサラダを一緒に出していたそうです。海軍では毎週金曜日にカレーを出していたそうですが、これは海上勤務の中で曜日感覚を取り戻すためだったそうです。当時の海軍カレーの作り方は1908年発行の「海軍割烹術参考書」に記載されています。
☆カレイライス(「海軍割烹術参考書」より抜粋)
・材料牛肉(鶏肉)人参、玉葱、馬鈴薯、鹽「カレイ粉」麥粉、米
・初メ米ヲ洗イ置キ牛肉(鶏肉)玉葱、人参、馬鈴薯ヲ四角ニ恰モ賽ノ目ノ如ク細カク切リ、別ニ「フライパン」ニ「ヘット」ヲ布キ、麥粉ヲ入レ狐色クライニ煎リ、「カレイ粉」ヲ入レ「スープ」ニテ薄トロヽノ如ク溶シ、之レニ前ニ切リ置キシ肉野菜ヲ少シク煎リテ入レ(馬鈴薯ハ人参玉葱ノ殆ド煮エタルトキ入ル可シ)、弱火ニ掛ケ煮込ミ置キ、先ノ米ヲ「スープ」ニテ炊キ之レヲ皿ニ盛リ、前ノ煮込ミシモノニ鹽ニテ味ヲ付ケ、飯ニ掛ケテ供卓ス。此時漬物類即チ「チャツネ」ヲ付ケテ出スモノトス。
「ヘット」は牛脂。「チャツネ」はインド料理の薬味で、マンゴー、りんごなどの果物や野菜に様々な香辛料、酢、唐辛子、しょうがなどを加えてジャム状に煮詰めたものです。「スープ」については詳述されていませんが、フォンドボーやブイヨンスープだったようです。
海軍カレーの作り方を紹介したサイトはいくつかありますが、その中でも よこすか海軍カレーの「作り方と特色」 が一番わかりやすいと思います。ここでは、スープは水600cc+酒600cc+スープの素4〜5個で代用、チャツネは砂糖 小さじ1/3できることも紹介されています。また、 海上自衛隊第4術科学校 のホームページでは写真付きでカレー以外の海軍料理も紹介されています。
余談ですが、日本海海戦100周年記念宴で真之の孫 大石尚子さんにお会いしたとき、大石さんは「やっぱり海軍はカレーよねぇ」と言いながら、会場で用意されていた海軍(?)カレーを食べていました。大石さんのホームページでもカレーを食べている写真がトップに載っています。
今回は上記の よこすか海軍カレーの「作り方と特色」 を参考にして、我が家でも海軍カレーを作ってみました。
☆材料(4〜5人分)
牛肉(薄切り)・・・・450g
スープ・・・・・・・・・・水600cc+日本酒600cc+スープの素4個
じゃがいも・・・・・・・5個
人参・・・・・・・・・・・・2本
玉ねぎ・・・・・・・・・・ 3個
牛脂・・・・・・・・・・・・3つ
オリーブ油・・・・・・・適量
小麦粉・・・・・・・・・・大さじ 3
カレー粉・・・・・・・・・大さじ 6
塩、こしょう・・・・・・・少々
砂糖・・・・・・・・・・・・小さじ 1
※材料のじゃがいも、人参、玉ねぎは少し小さめの物を使っています。
☆作り方
@ まず、スープ(水+スープの素×1)で米を炊く。
A じゃがいも、人参、玉ねぎを1.5cm角の賽の目切りにする。
B 鍋に水600cc、日本酒600cc、スープの素4個を入れて煮立て、スープを作る。
C フライパンに牛脂(1個半)を入れて強火で熱し、玉ねぎを3分ほど狐色になるまで炒める。
D 玉ねぎが狐色になったら牛肉を入れ、焦げ色がつくように炒める。その後、人参、じゃがいもを加えて強火で2分くらい炒め、さらに中火で5分ほど炒める。
E 炒めた野菜と肉は煮立ったスープに入れ、弱火で20分ほど煮込む(焦げないように時々底のほうをかき混ぜるようにする)。
F 熱したフライパンに残りの牛脂を入れ、小麦粉を加えかき混ぜながら弱火で狐色になるまで炒める(焦がさないように注意する)。ちなみに、汁気の多いカレーが揺れる船内でこぼれにくいように小麦粉を加えることでトロみをけるというのは海軍によるアレンジとのことです。
G 炒めた小麦粉にカレー粉を加え、弱火で焦がさないように炒める。さらにEの鍋のスープを少しずつ加えながら炒め、とろみがでるように混ぜていく。
H GのカレールーをEの鍋に加え、全体を混ぜ合わせながら塩、こしょう、砂糖で味付けをする。
I ごはんを皿に盛り、カレーをかけて出来上がり♪ もちろん、野菜サラダと牛乳も一緒に。
F〜Gのところでダマになりやすくて少し苦労しましたが、初めてにしては上出来の味でした。
日本海海戦100周年記念式典で記念品としてもらった日本酒の賞味期限が近づいていたのですが、学生時代に急性アルコール中毒で救急車に乗って以来、日本酒は苦手なのでなかなか飲むことができませんでした。ということで、海軍カレー第二弾の隠し味として投入。今回はスープにブイヨンを使用し、チャツネも入れてみました。結果は・・・・・チャツネの味が濃すぎた(泣)。カレー粉を増量して何とか味を調えましたが、チャツネを使ってカレーを作る場合は味見をしながら少しずつ入れていくことをお薦めします。
「在此一戦」もちょっとだけ飲んでみました。純米酒なのでけっこう美味しいお酒でした。
嫁との会話の中で思いついた企画。なぜこんなことを思いついたのかというと・・・・、
・我が家では毎年3〜4回、馬刺しセットを注文しており、その中に加熱用馬肉があった。
・以前、鹿カレー、熊カレー、トドカレー、アザラシカレーなど変ったカレーを食べたことがあった。
・で、加熱用馬肉を使う料理の候補としてカレーを思いついた。
・さらに 馬=好古 だから、真之の好きな豆を入れて「秋山兄弟カレー」にしようと思いついた。
という、ただそれだけの気まぐれ企画です。材料は上記の海軍カレーの材料に加えて、
加熱用馬肉(写真左)とカレー豆(写真右)。豆は煎ってはいませんが、煮込む前にフライパンで他の具と共に軽く炒めてから入れています。完成品はこちら。
今回はスパイシーなカレー粉を使ったので、馬肉の臭味もほとんどなく美味しく出来上がりました(ちなみに熊カレーやトドカレーなども臭味を消すためか、かなりの辛口です。それでもトドとアザラシは獣臭がすごい・・・・)。
さらに番外編。馬の挽肉とカレー豆で作った「秋山兄弟キーマカレー」です。
勝手に命名して作ったのですが、秋山好古が馬肉を食べたことがあるのかどうかは分かりません。馬は大切な相棒だから食べなかったのか、そんなことは気にせずに酒の肴として食べていたのか??ちなみに馬肉そのものは、江戸時代から薬膳料理として食べられていたそうです。僕自身は出身地の長野県、数か月住んでいた熊本県が馬刺しの産地だったので何度も食べたことがあるのですが、他県の人にとっては珍しい食材のようですね。