明治時代のダジャレ


 

「筆まかせ」 第二編 の 『一口話し』 より。()は管理人の注釈。

 

 

「よく見て買つてこいといふに、こんな漏る様な土瓶を買つてきて」

ホイそこ(底)にはきがつかなんだ」

 

オイ蕎麦を食ひに行かんか」

「書生の食ふ物は相場()がきまつてらァ」

「ナニそば(側)にあるから

 

「一寸マッチを貸してくれ」

「今出すからマッチ(待ち)給へ」

 

「小刀かさないか」

「そんな者はナイフ、ナイ(無い)

 

「貴殿は近頃、鉄道局の技師になつたさうだな

「あんまりせはしいといふから鉄道(手伝う)てやるの

 

「オイ傘をかしてくれんか」

かさない」

 

「永江君、君の名がえゝねへ」

 

「けふボールを打たうと思つたのに、これでは雨天(打てん)ねへ」

 

「オイ、ボールを打つなら、たまにはいゝのをよこしてもいゝじゃ、

 アゝこんな強いのはたまらない」

 

「きのふあんまり舟を漕いだら、けふはなんだかボート(ボ〜っと)してゐる」

 

「算(3)も出来、詩(4)も作るが、碁(5)は知らんのか、そりやろく(6)なことない」

 

「きさまの詩(4)は語(5)にもならぬ」

 

「足袋をかさないか」

「一度ならいいが、たびたびはいけないよ」

 

「これはあい鴨かい、僕鶏だと思った」

「そうとり違へては困る」

 

 

 「筆まかせ」では『日本語の利害』、『随筆の文章』、『言文一致の利害』、『言語の一致』などで言語・文章について真面目に論じているだけでなく、『填字』や『一口話し』のようなちょっとした息抜きもある。この他にも『数字のしゃれ』、『洒落の極意』という文章が載っていて、友人達のダジャレが紹介されている。また、『洒落の番附』というものもあり、子規が西之方小結、佃一予が東之方前頭となっている。