三十六計


中国の兵法書。作者や成立時期は不明。


 

勝戦の計


瞞天過海(まんてんかかい)
天をあざむいて海を渡る。奇策は普段見慣れていて疑いを抱かない所に隠れている。

囲魏救趙(いぎきゅうちょう)
魏を囲んで趙を救う。敵の重要拠点を攻撃し、集中している敵を分散させる。

借刀殺人(しゃくとうさつじん)
刀を借りて人を殺す。自分は直接手を下さず、第三者に敵を攻撃させる。

以逸待労(いいつたいろう)
逸を以て労を待つ。戦力を温存しつつ、敵を疲労させてから攻撃する。

趁火打劫(ちんかだきょう)
火につけこんでおしこみをはたらく。敵が弱体化しているときには一気に追撃する。

声東撃西(せいとうげきせい)
東に声して西を撃つ。東を攻めるように見せかけて西を攻める。陽動作戦。



敵戦の計


無中生有(むちゅうしょうゆう)
無の中に有を生ず。無いものをあるように見せかけて、相手の判断を狂わせる。

暗渡陳倉(あんとちんそう)
ひそかに陳倉を渡る。敵の注意を攻撃目的とは別に場所へ引きつけてから攻撃する。

隔岸観火(かくがんかんか)
岸を隔てて火を観る。敵が内部分離して統制が乱れたら、静観して自滅を待つ。

笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)
笑いの裏に刀をかくす。友好の意志を示して相手を油断させ、警戒を緩めたところで攻撃する。

李代桃橿(りだいとうきょう)
スモモ、桃に代わってたおる。局部的な損害と引換に、全面的な勝利を勝ち取る。

順手牽羊(じゅんしゅけんよう)
手にしたがいて羊をひく。どんな小さな利益でも、手当たり次第獲得する。



攻戦の計


打草驚蛇(だそうきょうだ)
草を打って蛇を驚かす。敵が行動を起こすように仕向け、その反応から敵情を把握する。

借屍還魂(しゃくしかんこん)
屍を借りて魂を還す。力のある者は利用できない。援助を求めてくる力のない者を利用する。

調虎離山(ちょうこりざん)
虎をあしらって山を離れしむ。要害の地に立てこもる敵をおびき出して攻撃する。

欲擒姑縦(よくきんこしょう)
とらえんと欲すればしばらくはなつ。敵を追い詰めすぎず、逃げ道を作って勢いを弱めてから攻撃する。

抛磚引玉(ほうせんいんぎょく)
レンガをなげて玉を引く。敵が食いつきそうなエサで誘い出す。

擒賊擒王(きんぞくきんおう)
賊をとららえるには王を捕らえる。主力を撃滅すれば、敵を壊滅させることができる。



混戦の計


釜底抽薪(ふていちゅうしん)
釜底より薪をぬく。敵の生命線を断ち、気勢を削いで骨抜きにする。

混水摸魚(こんすいぼぎょ)
水を混ぜて魚をさぐる。敵を混乱させ、それに乗じて攻撃する。

金蝉脱殻(きんせんだっかく)
金蝉、殻を脱す。守勢の構えを示して敵を釘付けにし、密かに移動する。

関門捉賊(かんもんそくぞく)
門を閉ざして賊をとららえる。弱小な敵は包囲殲滅する。ただし、深追いは避ける。

遠交近攻(えんこうきんこう)
遠く交わり近く攻む。遠い国とは友好的にして、近い国を攻める。

仮道伐

 (かどうばつかく)  
道を仮りてかくを伐つ。小国の窮状につけ込んで、これを併合する。




併戦の計


偸梁換柱(とうりょうかんちゅう)
梁をぬすみ柱を換う。策略によって敵の主力を骨抜きにする。

指桑罵槐(しそうばかい)
桑を指してエンジュを罵る。直接相手を批判せず、別の者を批判することによって、間接的に批判する。

仮痴不癲(かちふてん)
痴をいつわるもてんせず。バカなふりをして相手を油断させる。

上屋抽梯(じょうおくちゅうてい)
屋に上げて梯をはずす。敵をおびき出し、後続との連携を断ち切る。自ら退路を断ち、背水の陣をしく。

樹上開花(じゅじょうかいか)
樹上に花を開す。様々な手段を用いてこちらが優勢なように見せかける。

反客為主(はんかくいしゅ)
客を反して主と為す。隙に乗じて受動的状態から主導権を握る。



敗戦の計


美人計(びじんけい)
相手を籠絡し、弱体化させる。

空城計(くうじょうけい)
劣勢であることを隠さず、相手を惑わせる。

反間計(はんかんけい)
敵を疑心暗鬼に陥れ、内部離間を謀る。

苦肉計(くにくけい)
自らを犠牲にし、相手を信用させる。

連環計(れんかんけい)
策略を段階的に用いて、敵を消耗させる。

走為上(そういじょう)
走ぐるを上と為す。勝算がなければ逃げる。三十六計逃ぐるに如かず!