作戦篇


 

兵聞拙速、未賭巧之久也
(兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久なるを賭ざるなり)


 戦争に於いては、兵士・兵器・食料・燃料等に莫大な資金を費やして初めて大軍を動かすことができる。従って、戦争が長引くことによって軍は疲弊し、国家の財政は窮乏する。だから、戦争に於いては『拙速』(下手だが速く終わる)ということはあっても、『巧久』(上手くて長引く)ということはない。そもそも、戦争が長引いて国家に利益があるということはない。戦争の損害を知りつくしていない者は、戦争の利益も十分知りつくすことはできない。

 


兵貴勝、不勝久
(兵は勝つことを貴び、久しきを貴ばず)


 戦上手の者は、兵役や食料の徴収を何度も行わない。遠征した軍隊に補給を行うと、その分、国家の蓄えが無くなり物価が上がる。食料や燃料は、出来るだけ現地調達を心がけるようにする。以上のようなわけで、戦争は勝利を第一とするが、長引くのは良くない。戦争の利害をわきまえた将軍は国民の生死の運命を握り、国家の安否を決する。