好古の和歌

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  母の死を悼んで作った句

  美しく散りにけり山櫻



  満州で新年を迎えたとき

  新年や廣き野原で兎狩り



  朝鮮駐屯軍司令官在任中、長女に送った歌

  よきにつけ悪しきにつけて思ふかな
         國の行末如何になるやと




  嫁ぐ次女へ送った歌

  よきにつけ悪しきにつけて思ふかな
         子の行く末は如何になるやと


  なへてとて育つものとは知りなから
         なせ斯くまでに子を思ふかな




  還暦 

  位富み齢また富み白銀の千代を祝ふ今日の楽しみ



  大正十三年の正月

  静けさや富士を眺めて寝正月


  いつ、どこで詠んだか不明

  打ち寄する波を笑はす磯の巌



 長女に送った「よきにつけ・・・」と、次女に送った「よきにつけ・・・」、一字入れ替えただけ。前の歌を詠んでから数年経っているので、同じような歌を作ったことを忘れていたのかもしれない。伝記では上記の和歌を紹介したあと、「右の如く将軍は巧拙は別とし、・・・云々」と、なぜか歌の評価を避けている。確かにあまり上手いとは言えないが、「なへてとて・・・」という歌は好古が娘を思う気持ちがよく表れており、下手なりにも嫁ぐ娘のために一生懸命歌を考えている好古の姿が目に浮かぶような気がする。