斜陽と鉄血 / 軍服の聖者

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書名

斜陽と鉄血 / 軍服の聖者
(現代戦争文学全集第2)

編集

津野田是重

出版

香風閣

出版年

昭和十年


 津野田是重が日露戦争中の乃木希典と第三軍司令部の様子を記した回想記。開戦から旅順開城までを描いた「斜陽と鉄血」、奉天会戦から凱旋までを描いた「軍服の聖者」の二編が収録されています。いわゆる戦記物ですが、文章そのものは堅苦しいような表現は少ないので、「肉弾」「此一戦」よりも比較的読みやすいと思います。「津野田是重」のページでも紹介していますが、津野田自身の失敗談などエピソードが豊富です。
 「斜陽と鉄血」では従軍当時日誌をもとに旅順攻撃の推移や作戦の立案過程なども詳細に記されています。「坂の上の雲」で批判されがちな第三軍司令部当事者の見解が分かる資料とも言えますが、津野田自身の主観がかなり入っているかもしれません(児玉が督戦に来た際のエピソードはさほど細かく書かれていないので、乃木に都合の悪い部分は省いた可能性もあります)。空回りが多かった津野田自身の作戦判断が参考になるかどうかは別としても、認識不足があったことを認めて「其の後の事実に照し正に自己の不明を謝すると同時に死傷者に対しては真に申し訳ない」と正直に書いている点は潔いと思います。
 個人的にお薦めの書籍ではありますが、古書市場での流通量が少ないため入手には時間がかかるかもしれません。価格は2000〜3000円程度でそれほど高いものでもないので、興味のある方は見つけ次第購入するのがよいでしょう。